「確定申告、自分でできるだろうか」——初めて向き合う年は、誰でも不安になります。調べるほど情報が多くて、かえって分からなくなることもあると思います。先にお伝えしたいのは、確定申告は「全部自分でやる」か「全部頼む」かの二択ではないということです。作業をいくつかに分けて眺めると、「ここは自分でいける」「ここだけ手伝ってもらう」という線が引けます。その線の引き方を、正直に整理してみます。
確定申告を、4つの作業に分けてみる
確定申告はひとつの作業ではありません。ざっくり分けると、次の4つです。どこでつまずきやすいかは、人によってかなり違います。
1. 日々の記録(記帳)
売上と経費を、日付・相手・金額で記録していく作業です。いちばん時間がかかるのはたいていここです。なお、帳簿をつけて保存する義務は、青色申告の方だけでなく白色申告の方にもあります。「白色だから記帳しなくていい」ということはありません。
取引の件数が少なければ、会計ソフトで十分にこなせる部分でもあります。
2. 1年分の集計・決算
1年を締めて、売上・経費・利益を確定させる作業です。ここから、在庫の評価や減価償却、自宅兼事務所の家賃・光熱費をどこまで経費にするか(家事按分)といった判断が入ってきます。
計算というより、選択が増えてくる場面です。
3. 控除・特例の判断
使える制度を取りこぼさないことは、いちばん確実で健全な節税です。たとえば青色申告特別控除は、複式簿記で記帳し期限内に申告すると55万円、さらにe-Taxによる申告または電子帳簿保存を行うと65万円、簡易な記帳の場合は10万円です。
ほかにも小規模企業共済、医療費控除、扶養や保険料の控除など、状況によって使えるものが変わります。知っているかどうかが、そのまま金額の差になりやすいのがこの部分です。
4. 申告書の作成・提出
国税庁の「確定申告書等作成コーナー」やe-Taxを使えば、1〜3が固まってさえいれば、提出そのものはそこまで難しくありません。申告の期間は原則として翌年の2月16日から3月15日までです。
実際に手が止まるのは、提出の操作よりも、たいてい1〜3のどこかです。
自分でやって大丈夫なケース
正直に申し上げると、次のような状況なら、無理に頼まなくてもご自身で進められることが多いと思います。
- 会社員の方で、医療費控除やふるさと納税など控除の申告だけ
- 副業を始めたばかりで、取引の件数が少ない(給与のほかに所得が20万円を超えると申告が必要になります)
- 事業を始めた最初の年で、売上も経費もシンプル
- 会計ソフトを使っていて、入力が滞っていない
この範囲であれば、税理士に頼む必要性はそこまで高くありません。まずご自身でやってみて、手応えを見てから考えても遅くはないと思います。
「そろそろ頼もうか」のサイン
一方、次のどれかに当てはまってきたら、一度話を聞いてみる価値があります。
- 入力が追いつかなくなってきた(領収書が箱にたまっている)
- 売上が1,000万円に近づいてきた ― 消費税の課税事業者になるかどうかは、原則として前々年(基準期間)の課税売上高で判定します。前年の1月〜6月(特定期間)で判定される場合もあります。※インボイス(適格請求書発行事業者)の登録をしている間は、売上の額にかかわらず消費税の申告が必要です
- 人を雇った、外注が増えた(源泉徴収や年末調整が関わってきます)
- 不動産を売却した、相続があったなど、年に一度あるかどうかの出来事が起きた(相続の場合は「池田市で相続が起きたら、まず何をする?」をご覧ください)
- 申告のために毎年何日もつぶれている
最後のひとつは軽く見られがちですが、その時間を本業に使ったらいくらになるか、という見方も大切だと思っています。
「全部か、ゼロか」ではありません
当事務所には、記帳はお客様にしていただき申告まわりをお引き受けするプランと、資料をお預かりして記帳から決算・申告まで一貫してお引き受けする「おまかせ」のプランがあります。どちらが良い・悪いではなく、今のご自身の状況に合うほうを選んでいただければ十分です。
途中まで自分でやってみて、「ここから先は自信がない」と分かること自体が、立派な判断材料です。最初から完璧に線を引ける方のほうが、むしろ少ないと思います。
なお、これから開業する方や「税理士に頼むのはまだ早いのでは」と迷っている方は「これから開業する人へ ― 税理士っていつから必要?」を、そもそも税理士と会計士のどちらに頼むべきか迷っている方は「「会計士」を探している方へ ― 税理士との違い」もあわせてご覧ください。
「途中まで自分でやったけれど、合っているか自信がない」——そうしたご相談も歓迎です。資料の渡し方についても、投げ込み式のボックスなど、お客様のご負担が最小になる方法をこちらからご提案します。経費になるかどうかの判断も、事前にいつでもお尋ねいただければお答えします。ひとりで抱え込まずに済むだけでも、気持ちはずいぶん軽くなるはずです。
よくあるご質問
Q.自分で途中まで入力したものを、確認だけしてもらうことはできますか?
はい、そうしたご相談も承っています。ご自身で入力された内容を拝見し、勘定科目の使い方や家事按分、使える控除の取りこぼしなどを一緒に確認する形です。「途中まででお恥ずかしい」と感じていただく必要はまったくありません。どこまでできているかを見せていただくところから始めます。
Q.会計ソフトを使えば、税理士は必要ないのでしょうか?
取引がシンプルであれば、会計ソフトだけで十分に完結する場合があります。会計ソフトが得意なのは計算と転記で、判断そのものは使う方に委ねられます。何を経費にするか、どの控除を使うか、いつ法人化を考えるか——そうした判断が増えてきたときが、相談を考える一つの目安になります。
Q.白色申告のままですが、青色申告にしたほうがよいのでしょうか?
多くの場合、青色申告のほうが有利になります。複式簿記で記帳し期限内に申告すると青色申告特別控除55万円、さらにe-Taxまたは電子帳簿保存を行うと65万円が受けられ、簡易な記帳の場合は10万円です。ただし青色申告をするには事前の承認申請が必要で、原則としてその年の3月15日まで(新規に開業した場合は業務開始から2か月以内)という期限があります。切り替えをお考えでしたら、早めにご相談ください。