株式会社と合同会社の違いは、設立の費用と、決算公告の義務に出ます。登録免許税は株式会社が資本金の0.7%(最低15万円)、合同会社が同じ0.7%(最低6万円)で、株式会社にはこれに定款認証の手数料(1万5千円〜5万円)と、毎年の決算公告が加わります。会社をつくろうと調べ始めると、最初に迷うのがここです。費用が安いから合同会社、という声もあれば、信用を考えるなら株式会社、という声もあります。
先にお伝えすると、税金のかかり方は、どちらも同じです。違うのは、設立と維持にかかる費用、設立後の手続き、そして外からの見え方です。今回は、その違いを並べたうえで、どんな方にどちらが向いているかと、あわせて登記の前に決めておきたいことを整理します。
その前に ― 会社にするかどうか
すでに個人で事業をしている方にとっては、「会社にする」こと自体が最初の判断です。社会保険料・税金・会社の維持にかかる費用を並べてみないと、ご自身にとって得かどうかは分かりません。考え方は「法人成りと社会保険料の本当のところ」に書きました。ここから先は、会社をつくると決めた方に向けたお話です。
株式会社と合同会社は、何が違うのか
法人税・住民税・消費税といった税金の仕組みは共通です。違いは次のようなところに出ます。
| 株式会社 | 合同会社 | |
|---|---|---|
| 設立登記の登録免許税 | 資本金の0.7%(最低15万円) | 資本金の0.7%(最低6万円) |
| 公証役場での定款の認証 | 必要(手数料は資本金などに応じて1万5千円〜5万円(日本公証人連合会「12 手数料」)) | 不要 |
| 決算の公告 | 毎年必要 | 不要 |
| 役員の任期 | あり(任期ごとに登記が必要) | なし |
| 役員を増やす・減らすとき | 株主でない人も役員にでき、株主総会で決めて登記する | 役員は出資者(社員)である必要があり、出資や持分の移動・定款の変更を伴う |
| 代表者の肩書き | 代表取締役 | 代表社員 |
| 利益の分け方 | 原則として持ち株の割合に応じる | 定款で自由に決められる |
※2026年9月時点の制度に基づく一般的な内容です。役員の任期は、株式を自由に譲渡できない会社であれば、定款で最長10年まで(e-Gov法令検索「会社法」)延ばせます。
設立のときの費用は、登録免許税と定款の認証を合わせて、株式会社のほうが10万円以上多くかかります。設立後も、株式会社には決算の公告と、役員の任期ごとの登記があります。ひとりや少人数の会社にとって、日々の運営で差を感じやすいのはこのあたりです。
もうひとつ、見落とされやすいのが役員の増減です。合同会社では、会社の仕事を担う役員は出資者(社員)でなければなりません。あとからご家族を役員に迎えるには、その方に出資してもらうか持分を譲るなどして社員になってもらい、定款も変える必要があります。役員が抜けるときも、持分の払い戻しや譲渡の整理が伴います。株式会社であれば、株を持っていない方も役員にでき、株主総会で選んで登記すれば足ります。
株式会社が向いている場合
- 取引先や業界で、株式会社であることが当たり前とされている
- これから人を採用していきたい(求人で会社の形を見られることがあります)
- 将来、奥様やお子様など、ご家族を役員に加える可能性がある
合同会社が向いている場合
- ひとりで小さく始め、あとから役員を増やす予定がない
- 設立と維持の費用・手間を抑えたい
- 取引先が会社の形をあまり気にしない(個人のお客様中心、ネットでの販売など)
- 個人事業を続けながら、小さな会社を別に持つ(マイクロ法人として使う)
合同会社は以前より広く知られるようになり、大手企業の日本法人にも合同会社は少なくありません。一方で、名刺の「代表社員」という肩書きに、なじみのない方がいるのも事実です。迷う場合は、主な取引先がどう受け止めそうかを基準にするのが現実的です。なお、合同会社から株式会社へは、あとから変えることもできます(そのときは手続きと費用がかかります)。
ほかに、登記の前に決めておく4つのこと
会社の形のほかにも、定款に書き込む項目で、先に決めておきたいものがあります。
1. 決算月(事業年度)
会社は、事業年度をいつからいつまでにするかを自由に決められます。決算月は1年の締めくくりであり、申告と納税の時期(原則として決算から2か月以内)も、この月で決まります。決算の準備と本業の繁忙期が重ならない月にするのが、ひとつの目安です。
また、社長の役員報酬は、事業年度が始まってから3か月以内に決めるのが原則です。決算月を決めると、役員報酬を見直す時期も決まります。
2. 資本金
会社は資本金1円からでもつくれます。ただ、資本金があまりに少ないと、取引先や金融機関から信用力が低く見られたり、実態のないペーパーカンパニーではないかと思われたりすることがあります。そのため実際には、100万円から300万円、あるいは500万円程度で設立される方が多くいらっしゃいます。
なお、資本金が1,000万円以上だと、設立1期目から消費税を納める義務が生じます。小さく始める会社では、1,000万円未満にするのが一般的です。
「100万円を入れたら、そのお金は会社のために使い切らないといけないのか」と心配される方もいますが、そういうわけではありません。いったん会社に入れたお金でも、生活費がどうしても必要になったときなど、会社から社長個人へ貸し付ける形で取り出すこと自体はできます。ただ、会社から社長への貸付けには税務上の注意点もありますので、その場合はこちらからご説明します。会社と個人のお金のやりとりの考え方は、「会社のお金と個人のお金の分け方」に書きました。
3. 本店の場所
ご自宅を本店にすることもできます。賃貸住宅の場合は、事業に使ってよい契約かどうかを先に確認してください。なお、本店の住所は登記され、誰でも確認できる情報になります。
本店の場所によって、申告する税務署と、赤字でもかかる住民税の均等割の額が変わります。池田市・豊中市・箕面市の比較は「池田市で会社を設立したら」にまとめています。
4. 役員
ひとりで会社をつくる場合、役員は社長おひとりで問題ありません。
ご家族に会社の仕事を手伝ってもらう予定があれば、役員に入っていただくことも考えられます(合同会社の場合は、先ほどのとおり出資や持分の手続きが伴います)。たとえば、経理や書類の整理といった事務をご家族に担っていただき、その仕事に対して役員報酬を支払う形です。社長おひとりに報酬を集めるよりも、ご家族にも所得が分かれることで、世帯全体の税負担が軽くなる場合があります。報酬の額は、担っていただく仕事の内容に見合った額で決めます。社会保険の扱いも変わりますので、あわせて試算してから決めるのがおすすめです。
会社設立までの流れ ― 定款から登記まで
ここまでが決まったら、あとは手続きです。おおまかには次の順に進みます。
- 定款をつくる:会社名、事業の目的、本店、資本金、決算月、役員などを書き込みます。電子データで作成すると、紙の定款に必要な収入印紙(4万円)がかかりません。
- 定款の認証を受ける(株式会社のみ):公証役場で行います。
- 資本金を払い込む:会社の口座はまだないため、発起人(多くは社長ご本人)の個人口座に払い込み、その記録を残します。
- 法務局に設立登記を申請する:原則として、申請した日が会社の設立日になります。
- 登記が終わったら:税務署などへの届出と、会社名義の口座の開設です。届出の期限は「池田市で会社を設立したら」で解説しています。
登記の書類づくりと申請は、司法書士の仕事です。当事務所は司法書士と連携していますので、登記もあわせてご相談いただけます。
相談するなら、定款をつくる前に
会社の形・決算月・資本金・役員の顔ぶれは、どれも定款に書き込む内容です。あとから変えることもできますが、定款の変更や登記の手続きが必要になり、費用がかかるものもあります。そして、これらは設立後の役員報酬や税金の判断とつながっています。
当事務所では、設立前のご相談から、役員報酬の額や税金・社会保険料の見通しを、社長ご自身やご家族の生活に必要な金額までうかがったうえで試算しています。「いま決めること」と「まだ決めなくてよいこと」を分けるだけでも、手続きはずっと進めやすくなります。
※本記事の内容は2026年9月時点の制度に基づく一般的な説明です。個別の状況によって取り扱いが異なる場合がありますので、実行前に必ずご確認ください。
よくあるご質問
Q.会社の設立の手続き(登記)も、あわせて頼めますか?
登記の書類づくりと申請は司法書士の仕事です。当事務所は司法書士と連携していますので、登記もあわせてご相談いただけます。そのうえで、会社の形・決算月・資本金・役員報酬など、税金に関わる決めごとを当事務所で一緒に整理します。
Q.合同会社だと、取引や融資で不利になりますか?
会社の形だけで判断されることは多くなく、事業の中身や決算書のほうが見られます。ただ、業界や取引先によっては株式会社であることを求められる場合もありますので、主な取引先の考え方を事前に確かめておくと安心です。
Q.資本金は、いくらにすればよいですか?
1円からでも設立できますが、少なすぎると信用力が低く見られることがあるため、実際には100万円から300万円、あるいは500万円程度で設立される方が多くいらっしゃいます。1,000万円以上だと設立1期目から消費税を納める義務が生じるため、小さく始める会社では1,000万円未満にするのが一般的です。