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マイクロ法人スキームは終了?― 2026年の通知を確かめる

税理士 浅原健太 税理士 浅原健太(近畿税理士会 豊能支部・登録番号 第151926号) 2026.10.23

2026年の厚生労働省の通知に「マイクロ法人」という言葉は出てこず、マイクロ法人という形そのものが否定されたわけではありません。すでにマイクロ法人を持っている方が確かめておきたいのは、法人の実態——代表として経営と業務を担っているか、役員報酬が業務に見合った額で毎月支払われているか、法人として契約・請求・入金があるか——の3点です。ご自身で設立し、代表として経営し、法人として契約・請求・入金がある法人は、通知が背景に挙げている「個人事業主を法人の役員にして、報酬を上回る会費などを払わせる仕組み」とは別のものですが、判断の物差しはどちらも実態です。

「マイクロ法人スキームは終了」という言葉を目にして、手が止まった方もいらっしゃると思います。これから法人を作る方は「マイクロ法人とは?個人事業主が法人を併用するメリットと注意点」からお読みください。個人事業と法人で同じ事業を行っている場合の線の引き方は、「個人事業と法人で、同じ事業をやってもいいのか」で解説しています。

2026年の通知では、何が示されたのですか?

法人の役員が健康保険・厚生年金に入れるかどうかを、①業務が法人の経営に参画する経常的な労務の提供か、②報酬が業務の対価として法人から経常的に支払われているかの2つの物差しで、実態から総合的に判断することが、あらためて示されました。

通知は2026年3月18日に出され、9月14日に一部改正されています(厚生労働省「法人の役員である個人事業主等に係る被保険者資格の取扱いについて」)。背景にあるのは、社会保険料の削減をうたって個人事業主やフリーランスを法人の役員にし、会費などの名目で報酬を上回るお金を払わせる事業所が現れたことです。そうした場合は、原則として業務の対価とは認められないとされています。9月の改正では、会費の名目は問わない(勉強費・コンサルタント料・委託費なども含む)ことが明記されました。あわせて、会費が報酬と同じか下回っていても、その額が報酬の多くを占め、役員どうしの互助的な活動にとどまる場合などは、使用関係が認められない可能性があるとして、実態を個別に判断することが加わりました。

同じ9月14日には、役員ではなく、勤務時間がごく短い正規の従業員として雇う形についての通知も別に出ています。日付や対象は、厚生労働省のページで原文を確かめられます。

自分で作った法人も、通知の対象になりますか?

当事務所は、ご自身で設立し、代表として経営し、法人として契約・請求・入金がある法人は、通知が想定している形とは別のものと考えています。ただし、①②の物差しそのものは、代表者を含む役員一般に向けたものです。

通知の本文は「法人の役員(代表者を含む。)」の資格の取扱いから始まり、①②を基準に実態を踏まえて判断するとしています。法人は社長ひとりでも厚生年金保険の適用事業所で(日本年金機構「適用事業所と被保険者」)、通知はこの仕組みを変えたものではなく、役員の資格をどう判断するかを明確にしたものです。

一方で通知は、判断の材料として、担当する業務の決裁権があるか、会議に出て意見を述べるだけにとどまっていないか、会議のほかに業務があるか、といった点を挙げています。「自分で作った法人だから関係ない」と考えるより、物差しに照らして説明できる状態かを一度確かめておくほうが安心です。

なお、ご自身で作った法人ではなく、社会保険料の削減をうたうサービスなどを通じて他の法人の役員になり、会費などを払っている場合は、通知が背景に挙げている形に近くなります。その場合は、一度、社会保険労務士や年金事務所にご相談されることをおすすめします。

何を、どの書類で確認すればいいですか?

当事務所がマイクロ法人の設計で確認している次の3点を、手元の書類で説明できるかを見てください。

確認すること説明できる状態手元で見る書類
経営と業務
(物差し①)
取引先・値段・支出をご自身で判断し、会議に出るだけでなく、法人の業務を実際に行っている取引の判断が分かるメールや発注書、業務の予定表や作業の記録
役員報酬
(物差し②)
業務に見合った報酬を、毎月同じ額で、法人の口座から支払っている役員報酬の額を決めた株主総会などの議事録、法人の通帳の振込記録
法人としての取引法人の名前で契約・請求し、法人の口座に入金されている。個人事業とは口座と帳簿を分けている法人名義の契約書・請求書、法人の通帳、帳簿

3つめの「法人としての取引」は、収益がだれのものかを名義ではなく、実際に収益を受けている者で判断する税金の原則(法人税法11条・所得税法12条)にも関わります。会社と個人のお金が混ざっている場合は「会社のお金と個人のお金の分け方」も参考にしてください。

気になる点があったら、どう見直せばいいですか?

法人をたたむ、役員報酬を急に変える、といった判断の前に、税金と社会保険の両方で順番を確かめてから動くのが安全です。当事務所では、次の順で進めることをおすすめしています。

  1. 書類をそろえる:表の3点のうち説明が難しいところを書き出し、契約書・請求書・通帳・議事録を手元に集めます。
  2. 役員報酬を見直すなら、時期を確かめる:役員報酬の額は、原則として事業年度の開始から3か月以内に改定し、その後は毎月同じ額で支払わないと、損金にならない部分が出ます(国税庁 タックスアンサー No.5211、「役員報酬の決め方」)。社会保険料も報酬をもとに計算されるため、額を変えると保険料も変わる場合があります(日本年金機構「厚生年金保険の保険料」)。
  3. 社会保険のことは専門家に確かめる:資格を最終的に判断するのは、日本年金機構(年金事務所)や健康保険組合などです。手続きが必要な場面では、当事務所は社会保険労務士と連携してご案内します。
  4. 法人の形そのものを比べ直す:個人事業と法人を併用する形を続けるか、事業ごと法人に移すか、法人をたたんで個人に戻すかを、税金と社会保険料、法人の維持費まで含めて数字で比べます。事業ごと移す形は「法人成りと社会保険料の本当のところ」で解説しています。

お金を回しているだけの形や、個人の事業を形だけ法人に移した形は、通知の前から税務の面でも問題になる形でした。確かめることは、通知の前と後で大きくは変わっていません。役員報酬の額は、税金と社会保険料を合わせた手取りに加えて、生活に必要な金額までうかがってから、一緒に考えます。

BLOOMでは、すでにマイクロ法人をお持ちの方について、法人の実態の確認と役員報酬の見直しを、決算前の利益と納税額の見込みとあわせて、顧問として毎期お引き受けしています。面談から顧問までオンラインで完結するため、全国からご相談いただけます。

※本記事は2026年10月時点の厚生労働省の通知と法令に基づく一般的な説明です。社会保険の資格は、日本年金機構などが個別の実態をもとに判断します。

よくあるご質問

Q.役員報酬が低いと、通知で問題になりますか?

通知に、役員報酬が低いこと自体を問題にする文言はありません。物差しは、業務が経営に参画する経常的な労務の提供か、報酬が業務の対価として経常的に支払われているか、の2つです。額が業務の内容に見合っているか、毎月支払われているかを確かめてください。額を変える場合は、損金にするため、原則として事業年度の開始から3か月以内に改定します。

Q.役員報酬を年に一度まとめて受け取る形でもよいですか?

通知の物差しの一つは、報酬が業務の対価として「経常的に」支払われているかです。税金の面でも、役員報酬は毎月同じ額で支払う定期同額給与が基本で、年に一度の支給を損金にするには、原則として時期と金額をあらかじめ税務署に届け出て、そのとおりに支払う必要があります(事前確定届出給与)。社会保険でどう扱われるかは、社会保険労務士や年金事務所にご確認ください。

Q.社会保険の手続きや、年金事務所とのやり取りもお願いできますか?

社会保険の手続きは、社会保険労務士と連携してご案内します。当事務所は税務の立場から、法人の実態の整え方、役員報酬の額と改定の時期、税金と社会保険料を合わせた手取りの見込みを担当します。どちらに聞けばよいか分からない段階でも、まずはご相談ください。

税理士 浅原健太

浅原 健太(あさはら けんた)

税理士(登録番号 第151926号・近畿税理士会 豊能支部)/経営学修士(MBA)|税理士事務所BLOOM 代表

大阪・池田を拠点に、全国対応(オンライン含む)で法人・個人の税務をサポート。「申告して終わり」にせず、決算前の早い段階で利益・納税額をシミュレーションし、先回りでご提案することを大切にしています。初回のご相談は無料です。

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